これらの流れをどう考えるべきなのか、今後ますます判断が難しくなるだろう。
ノックアウトマウスという新種「ノックアウトマウス」と呼ばれる新種のネズミたちが、遺伝子時代になって次々と生み出されている。
もちろん″殴り倒されたネズミ″ではなく、「特定の遺伝子が人為的に壊されている」という意味で、こう呼ばれている。
ES細胞(旺性幹細胞)を利用して、特定の遺伝子を導入した生物を作る技術を紹介した。
このノックアウトマウスもES細胞から作るのが代表的な方法で、特定の遺伝子を導入する代わりに、狙った遺伝子を壊したES細胞から作り上げる。
キメラのES細胞に由来する卵子と精子が受精すると、両方の遺伝子とも壊されているために、それに関係する遺伝的な性質を示さない動物が生まれてくる。
原理的には、マウスでなくてもノックアウト動物はできるが、研究用の実験動物としてはマウスが非常に便利なので、特に力を入れて開発が続けられているのである。
ではなぜ、ノックアウトマウスのような奇妙な動物が必要なのだろうか。
たとえばノーベル賞受賞者のT博士は、海馬と呼ばれる脳の部分で働く酵素の遺伝子を壊したノックアウトマウスを作った。
海馬は記憶や学習に関係している重要な器官なので、そこで神経細胞が働くメカニズムの具体的な研究が盛んに進められている。
免疫の研究で有名な利根川氏は脳についても大きな興味をもち、関係する遺伝子などの調査を進めている。
その一環として、海馬で働く酵素をコードしている遺伝子の1つを壊すと、どんな機能異常が起こるか確認するため、ノックアウトマウスを作ったのである。
このネズミに迷路を何度か歩かせて、道筋を覚えるかどうか調査した。
ふつうのネズミとくらべて記憶力がどう異なるか、学習能力の違いを調べたのである。
すると、予測どおりノックァゥトマウスのほうが明らかに記憶力が悪く、壊した遺伝子が学習に関係する遺伝子であることが確認されている。
このように、ある働きが推測できる遺伝子の機能を確認しようとするとき、その遺伝子を欠いたノックアウトマウスが重要になる。
繰り返し説明しているように、遺伝子DNAは塩基という物質の列にすぎないから、配列だけから機能を具体的に読み取ることはできない。
病気に関係する遺伝子が見つかるのも、その遺伝子が欠けていたり不完全だったりするため、つまり遺伝子が先天的にノックアウトされているために、異常な疾病などとなって現われていることによる。
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